Endless Summer

日記や本の感想など

海外のそっけない風景

海外に行くと「海外らしい」風景に出くわすことがある。アメリカやヨーロッパのことは分からないが、アジアの国々は路上の景色が似ていると思う。商店やゲームセンター、ガソリンスタンド、食堂など特に何の変哲もないのだが、何となくどの国へ行っても醸し出す雰囲気が似ている。

店の入り口のコンクリートはひび割れていて、タバコの吸い殻がやたらと落ちている。どこからか排ガスのにおいと香辛料のにおいがする。入り口の上に出ている派手な色の看板には、別の派手な色で店名らしきものが書いてある。店の中は昼間でも決まって薄暗い。暗いだけなのか薄汚れているのか、リノリウムの床がくすんで見える。大体ほこりをかぶった妙な置物や造花が飾ってある。店員はラフな格好でおしゃべりをしていたり、気怠そうに携帯をいじっていたりする。暑い時の店内は冷房が強くて冷蔵庫のようだし、反対に寒い時は蒸し上げるみたいに暖房が効いている。外気との差に体がおかしくなりそうだなと思いながら、その海外にありがちなシチュエーションで外国を実感する。

夜でも人通りが多いような栄えている街はもう少し活気があるが、少し田舎へ行くと大体においてこのような風景の中に身を置くことになる。夜になるとさらに寂れた印象が強くなる。タクシーに乗って通りを見ていると、看板だけは煌々と明るいものの、街灯も少なく、歩いている人もいない。明かりの届かない場所は真っ暗闇だ。奥には何が広がっているか分からない。

都会で暮らしているからそう感じるだけなのかもしれないが、これが完全な田舎であればそこまで気にはならない。北海道や四国の田舎に行ったことがあるが、やはり雰囲気が違うと思う。あるいは海外にいるという意識が見るものを通常以上に物寂しくしているのかもしれない。

言葉が分からないせいなのか、どうしても海外では周りのものが素っ気なく感じられるように思う。旅行をしている限り、自分はただ通り過ぎるだけの立場で、ある意味では知らない場所に迷い込んだようなものだ。知らない場所にいる、と思うと、高揚感と不安が同時に湧いてくる。海外で素っ気なく埃っぽい路上の風景を見る時、自分はいま海外にいる、ということをはっきりと感じる。